依存症の人に対して、周囲の人はアドラー心理学の「課題の分離」をしよう
今回も、『マンガで分かる心療内科 依存症編(酒・タバコ・薬物) (ヤングキングコミックス)』から、印象的な部分をピックアップしていきます。
依存症の人の、「意志が弱いから、依存から脱却できない」という意見についてはどうでしょうか。
依存している人は、お金や時間をなんとか工面してでも続けようとします。
つまり依存をなんとしてでも続けるという、強い意志を持っているわけです。
意志が弱いというのは言い訳で、ただやめたくないと思っているだけです。
「もはや、習慣になってしまってやめられない」という意見についてはどうでしょうか。
例えば家に帰るという習慣については、引っ越し後にずっと前の住所に通い続けることはありません。
習慣だからやめられないという、言い訳を欲しているだけです。
必要だと分かっていることであれば、習慣も変えられます。
依存しているものの、量を減らせればいいのでしょうか。
これは良くないというか、続かないです。
量を減らすということは依存の快楽を受けたうえで、我慢するという返ってつらい状態に陥ります。
よく禁煙を破ってしまうきっかけが、隣の人が吸っているのを見て我慢できなくなったという話を聞きます。
依存の対象を目にしてしまうと、それを断り続ける意志力が必要になってしまい、失敗してしまいます。
「酒を飲まないと眠れない」という場合はどうでしょうか。
そもそも眠ろうとするのは、睡眠を確保するためだと思います。
以下の、睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン - 日本睡眠学会によると
http://www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf
眠るための飲酒は逆効果です。
アルコールを飲むと⼀時的に寝つきが良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に⽬が覚めやすくなります。
深い眠りも減ってしまいます。
とあります。
飲酒の理由にはなりません。
家族がアルコール依存症の場合、周囲の人が気を付けることとして「世話を焼くこと」をしてはいけないそうです。
例えば酔いつぶれて玄関で寝てしまった人の世話をしてしまうと、本人が「酒に酔いつぶれてしまっても大丈夫だから、また酒を飲もう」と思ってしまい、逆効果になってしまいます。
以下の本では著者の人がアルコール依存の父の世話をずっとしていましたが、依存症がよくなることは無かったですね。
アルコール依存症と気づかなかった、あの頃のこと。|酔うと化け物になる父がつらい|菊池真理子|cakes(ケイクス)
よほど重大な事態になっていない限りは、「依存行動の結果(例えば玄関で寝てしまうなど)」を家族が解決せず、それによって困っているということを伝えるのが一番ということです。
このあたりの考え方は、アドラー心理学の「課題の分離」という考え方と同じであることが興味深いです。
また、「依存行為をしているときに叱責、説教する」こともいけないそうです。
依存行為中になにを言っても無駄なので、距離を取ることが必要です。
また、タバコにある病気のリスクが高まるという警告表示ですが、効果がないどころか返って逆効果という研究もあります。
『買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界』によると、タバコの警告を読むと、脳の「欲望のスポット」と呼ばれる側坐核という領域が刺激され、喫煙したくなるそうです。警告を読んだ本人は、理性ではもちろん警告の内容を理解していますが、無意識(本能)の方が強いわけです。
さらに周囲の人は、依存症の人に対して責任を感じる必要はないということです。
周囲の人が責任を感じると、依存症の人は周囲の人に責任転嫁してさらに依存がひどくなります。
周囲の人はお酒を飲んでほしいと頼んだり、タバコを吸ってほしいと命令したのでない限り、それは本人が勝手にやっていることで、責任を感じる必要はありません。
これも、アドラー心理学の「課題の分離」という考え方と同じですね。